TENGA VOICE
#97
星賢人 株式会社JobRainbow 代表取締役社長
人と違うということは、その人の「存在意義」にも繋がると思うんです。
今回のゲストは株式会社JobRainbow代表取締役社長、星賢人さん。ご自身もLGBTQ+(ゲイ)の当事者として、月間66万人がアクセスするNo.1 LGBTQ+求人の転職・就活サイト「JobRainbow(ジョブレインボー)」を22歳で立ち上げ、数多くの研修・コンサルティングを実施されています。 TENGAとも関わりが深く、LGBTQ+当事者の"自分らしく"を支援するオンラインキャンパス「PRIDE SCHOOL」を共同で主宰しており、今年で第3回目を迎えます。今回のインタビューではカミングアウトやセクシャリティにまつわる過去のエピソード、そして「自分らしさ」についても、たっぷり語っていただきました!
最近はカミングアウトの是非について話題になることも多いですね。賢人さんは、カミングアウトすることに対して、どう考えていますか?
LGBTQ+の問題って、当事者が活動に反対の立場をとることも多いんです。
当事者であることを隠し、抑圧されている状態が当たり前になっていると、カミングアウトした後にどれだけ心理的負担から解放されるかが分からないじゃないですか。
僕も大学生のときに早稲田大学の「GLOW」というLGBTサークルに出会うまでは、カミングアウトは一生しないつもりでした。まだまだ偏見や差別のある日本で普通に暮らしていれば、そういった気持ちになるのも当然だと思うんですよね。だから自分を守るという意味で、カミングアウトしないことも選択肢の一つだと思います。
隠さないで自分らしくいることも、僕はすごく心地良いと思いますし…。もしカミングアウトしてみたいと思うのであれば、もちろんウェルカムです。
賢人さんご自身がカミングアウトについて考えたきっかけはいつでしょうか?
早稲田大学のLGBTサークル「GLOW」に出会ったことがきっかけですね。
大学に入る時にネットで探して入りました。当時、冷やかしやアウティングのリスクを避けるために部室の場所は公開されておらず、担当の方に連絡して初めて案内されました。
「GLOW」はサイトもしっかりしていて、大学の文化祭で出し物をやっている様子を見て、「ちゃんと活動しているんだな」と信頼できたので入りました。
部室ではみんな自分らしく、イキイキと活動していました。
僕が自己紹介でカミングアウトしても、周りは「ふーん」といった何気ない反応でした。セクシャルマイノリティが当たり前の空間だったので、とても居心地の良さを感じましたね。
その時に初めて「LGBTサークル以外の人にもカミングアウトしてみたいな」と思いました。
賢人さんとしては、カミングアウトはしてもしなくてもいい、というような考えでしょうか?
そうですね……。僕はカミングアウトって、一生し続けるものだと思うんです。
美容室などに行ったとき、自分の事を知らない相手と接するので、「彼女いるんですか?」などと聞かれることがあります。結局カミングアウトって終わりがないんですよね。
そういう風に考えると、カミングアウトをゼロかイチで捉えるより、まずは自分の信頼できる人に伝えてみるのが良いんじゃないかと思います。その結果、必要性を感じなければカミングアウトしなければいいし、心地よさを感じるのであれば、伝える人の範囲を広げてみるのも、選択肢の一つにして良いんじゃないでしょうか。
JobRainbowさんのサイトにはセクシャリティ診断など、セクシャルマイノリティに関する情報が充実していますが、セクシャリティについてもサークル活動の中で学ばれたんですか?
僕は学術的にセクシャリティを理解していきたいという思いもありますが、実際に当事者に会うことで初めて実感することも多いですね。
大学生の頃、僕は大学でゲイの牧師さんの授業を取っていましたし、周囲にセクシャリティにまつわる研究をしている人もいました。
特に、僕が「学ぼう!」と思ったエピソードがあって……。
当時サークルにXジェンダーの子がいて、僕は最初「ちゃん付け」で名前を呼んでいました。その子に「私はXジェンダーだから、呼び名は君付けとか、呼び捨ての方がうれしい」と言われたんです。
知識がないことで人を傷つけてしまったと気づき、その経験から、サークル内で勉強会をする流れに繋がりましたね。
サークル活動がJobRainbowへとどのようにつながっていったのですか?
当時、僕は立教大学に通いながら早稲田大学の「GLOW」に入っていました。そこで出会った立教大学の方が新しくサークルの立ち上げをするという話を聞いたんです。その方と一緒に、非公認という形で立教大学内にサークルを作ったのがはじまりです。
大学ではLGBTサークルの代表になりましたが、そこでトランスジェンダーの先輩が就職活動で困っているのを目の当たりにしました。
「エントリーシートの男/女はどちらに○をつければいいんだろう、女性に○をつけたら虚偽記載になるのかな?」「スーツってメンズ/レディースどっち着ればいいんだろう?」「カミングアウトしたら“あなたみたいな人の前例がありません”と入社を拒否された」など困難の連続で、彼女は就職活動を諦めてしまいました。彼女のように苦しむ人を減らすべく、JobRainbowを立ち上げました。
一番尊敬する人はどなたですか?
孫正義さんですね。孫さんは「情報革命で人々を幸せに」というビジョンを掲げていて、「世の中を良くするためにビジネスがある」という考え方がすごく好きです。あと、スティーブ・ジョブズさんも好きですね。
「LGBTQ+への取り組みや、社会的な問題をビジネスで解決したい」という自分の気持ちは、そういう方々から影響を受けていると思います。
賢人さんの目標は何ですか?
JobRainbowは「差異を彩へ!」という、「一人ひとりの違いが彩りになること」というビジョンを掲げています。人と違うということは、その人の「存在意義」にも繋がると思うんです。自分が見てきたLGBTQ+の当事者の方の中には、僕から見るとすごく魅力的な面も、本人はものすごくマイナスに捉えていることがあるんです。
なので、最終的なゴールとしては、すべての人が、自分が人と異なる部分を「彩り」として、魅力と捉えて愛せる世の中にしていくことですね。
そのための短期的な目標として、会社として上場することも目指しています。
社会課題をビジネスにして、経済的にも影響力をもつというのは世の中への問いかけになりますし、上場できるくらいの規模の会社にしていきたいという思いがありますね。
TENGAを初めて知ったのはいつで、どんな印象を受けましたか?
いろんなメディアで「最近よく見るなあ」という印象でしたね。
よく覚えているのは、24時間テレビを見ている時に、TENGAの着ぐるみを着ている人が映ってたこと。「これ、何なんだろう!?」と思いました(笑)
それ以外にも、TENGAのものづくりについてのドキュメンタリーを見た時に、「すごい真面目に性に向き合ってる会社なんだな」という印象を受けました。
24時間テレビみたいなマス媒体でも普通に出てくるくらい、社会の一部になっているような会社なんだ、と思いましたね。あまり「エロい!」みたいなイメージはなかったです。
こんなTENGAがあったら!というアイデアはありますか?
詰め替えTENGAとかあってもいいのかな……。サステナブルTENGAみたいな? 一度使ったTENGAを回収BOXに入れて、それを新しくして再利用できる物があったら面白いんじゃないかと思います。
今回第3回PRIDE SCHOOLの開催が決定しましたが、改めてPRIDE SCHOOLを通して伝えたいことはありますか?
今年の第3回PRIDE SCHOOLは、第2回までと比較して、結構テイストが変わったものになっています。「自分らしく働く」は大きなテーマではありますが、今回は目的自体がより参加者にゆだねられています。
目的も具体的なものでなくてよく、例えば「やりたいものが見つからなくて、それを見つけたい」というのも目的だと思うんです。それくらい抽象度の高い目的でもいいので、参加することで何を得るのかを明確にしていただけたらいいなと思います。
ぜひ色んな人に参加してもらえると、様々な学びが得られて面白いんじゃないかと思っていますね。
星賢人 株式会社JobRainbow 代表取締役社長
株式会社JobRainbow 代表取締役社長
自身もLGBT(ゲイ)の当事者として、月間66万人がアクセスするNo.1 LGBTQ+ダイバーシティ採用広報サイト「ジョブレインボー」を22歳で立ち上げる。東京大学大学院情報学環教育部修了。Forbes 30 UNDER 30 in ASIA / JAPAN 選出。孫正義育英財団1期生。板橋区男女平等参画審議会委員として行政のダイバーシティアドバイザー。『LGBTの就活・転職の不安が解消する本(2020/3,翔泳社)』を出版。これまでに上場企業や自治体を中心とし、500社以上のダイバーシティコンサルティングや研修を実施。