TENGA VOICE
#94
丸山ゴンザレス ジャーナリスト
日本人は性癖バグってる
今回のゲストは世界各地を飛び回り、裏社会や危険地帯を取材しているジャーナリスト、丸山ゴンザレスさん。 2021年7月に打ち上げを実施したTENGAロケットプロジェクトでは、現地の密着取材のほか、打ち上げまでの中継番組にコメンテーターとしてご登場いただきました。 今回は、世界から見た日本の「エロ」文化や、街にある性の営みの残像、デザインへの視点を伺いました。
世界各地で取材する中で、性にまつわる話をすることはありますか?
取材の突破口として、恋愛や夫婦生活を含めた性の会話をすることは多いです。柔らかいテーマだと打ち解けやすくなります。普段はカチッとしている人でも、下ネタを話すと仲良くなりやすいんですよ。セキュリティとして同行してもらった警察官とも下ネタで盛り上がって仲良くなったことがあります。
「そんなに英語喋れたんですね!」と周りから驚かれたんですが、それは下ネタを話していたからなんですよ…。下ネタというかスラングを趣味的に収集していることもあったり、自分でも興味があるから英語を流暢に喋っているように見えるみたいです(笑)
その中でオナニーにまつわる話もでますか?
日本人同士の方がオナニーの話になりますね。海外だとオナニーよりSEXの話のほうが盛り上がります。国民性のようなものが反映されている気がします。
性に関して、日本は他の国と比べてなにか特殊な部分があるのですかね…
AVの種類とか、ものすごく多いでしょ! そういうのを見ていると、日本人は偏執的な思考を持っていると思うことが多いですよね。カッパが出てくるAVとか知っていますか? 日本人は性癖バグってるんじゃないかな。「ドイツと日本はエロがすごい」とよく話題に上がります。どっちも手先が器用な国だからなのですかねぇ。それだけでもないような気もしますけど(笑)
いずれにせよ日本はエロをカルチャーとして受け止めてきたと思います。独自の成長を遂げている変わった国ですよね。
ゴンザレスさんの取材の中で、性というのはどのような位置づけなのでしょうか?
歴史のある街には、暗部というか、性風俗にまつわるスポットが必ず存在するんですね。街の発展してきた歴史を知るためには、過去に性風俗店がどこにあって、周辺の街並みがどうなっているかを見ています。栄えているエリアの裏手には、たいてい性風俗店がありますから。ある意味、風俗や性というのは特定の場所でしっかり根付いている。それなのに今の日本では徹底して隠そうとしたり、遠ざけようとしている。
若いうちには、「性の営みはするものじゃない」という空気があるのに、結婚した途端に「子どもはまだ?」と急に周りの人から聞かれる。言い方は違うけど同じ性のことを話している。どこか矛盾していますよね。
風俗産業は国によっては違法行為としてくくられているけれど、根絶やしにされることはない。ダメだけど必要。元々人間社会は矛盾が集まって成り立っているもの。性風俗は、そういうものを象徴している分野でもあるかなと思っているんです。
ちなみに、TENGAとの出会いはいつだったのでしょうか?
TENGAを初めて知ったのは、伊集院光さんのラジオでした。(2006年9月4日放送の『伊集院光 深夜の馬鹿力』にて「まったく新しいオナカップ」とご紹介いただきました。)
当時、知ってすぐ使ってみたんですけど、あの頃は1回で使い捨てるなんてブルジョアな使い方はできなくて、使い回すことばかり考えていました(笑)
印象はどうでしたか?
TENGAは、自分の人生の中で「デザインの力に衝撃を受けたもの」のひとつですね。
出版の世界で仕事をするようになってから、デザインというものをずっと意識していたんですよ。本の装丁やフォント、配置など、見た目の印象だけで、読者が手に取ってくれるかどうかが変わりますからね。
ものづくりやまちづくりも含めて、「作る」ことには必ずデザインというものが伴うと考えています。極端な話、都市計画や人間関係もデザインだと。たとえば歌舞伎町も、1回じゃ探索しきれないようなT字路の組み合わせでできている。どんなものでも「デザイン」という視点は重要です。
TENGAができる前までは、アダルトグッズはアダルトグッズっぽい見た目だったので、そこにデザインという視点が入っていたのが自分の中で衝撃でした。
デザインの力で「アダルト」から「かっこいい」になったことによって、ラジオでも話せるようになったと思います。いつでもアングラ方面に行くことはできるのに、そっちにはいかないところがすごいです。
「こんなTENGAが欲しい!」というものはありますか?
自分流(自分好み)に組み立てていけるTENGAがあったらおもしろいと思いますね。あとはエロと環境への配慮がセットになった「エコロ自慰」だったらいいな…。
最後に、「健全にスケベであることは、性にまつわる危険な考えからもっとも遠いのかもしれない」とご著書の中でおっしゃっていました。「性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく」というTENGAのビジョンと重なるようにも思いましたが、いかがでしょうか?
ひとくくりに「性」と言っても幅広くて、表通りに出てくるものは出る、裏通りにあるものはあるという状態が続いていくと考えています。
全部が裏通りにあるのは、あんまり健全とは言えないんじゃないかな。突き詰めればみんな誰かの性行為の産物なわけで、なぜそれを全て覆い隠すのか。極端に恥ずかしかったりするのか。隠すべきことは隠して、堂々と話すべきことを話すことがどうしてできないのかと思います。
話すにしても、シンポジウムみたいにカチカチにまじめな場じゃなくて、もっとフラットに話せたらいいと思います。
表と裏のどちらか一方に情報がかたよるのではなく、表にも裏にもあると知ることが大事だし、それを知ることができる環境がほしいですね。
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江戸川乱歩賞受賞作家の佐藤究、ジャーナリストの丸山ゴンザレスがさまざまな方と交流する中で生まれたプロジェクト。Tシャツ製作はハードコアチョコレートが担当し佐藤究、丸山ゴンザレス、ハードコアチョコレートの合同プロジェクトとして始動した。
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丸山ゴンザレス ジャーナリスト
考古学者崩れのジャーナリスト/編集者/國學院大學学術資料センター共同研究員
1977年、宮城県生まれ。國學院大學大学院修了後、就職難からの無職、怪しいバイトで食いつなぐ日雇い労働などを経てガテン系の会社に就職。ほどなく倒産するが、いろいろあってデビュー作を執筆しながら転職活動をして出版社に勤務。
書籍編集者としてビジネス書や資格本などを編集する傍ら、日本国内の裏社会を取材。その後、取材を優先する生活にシフトするため独立。現在は海外の裏社会や危険地帯、スラムなどの取材を続ける。
著書は『アジア「罰当たり」旅行』(彩図社)、『アジア親日の履歴書』(辰巳出版)。『世界の混沌を歩く ダークツーリスト』(講談社)『世界の危険思想~悪いやつらの頭の中~』(光文社新書)など多数あり。